才能のある作家や絵師を発掘し、作品を世に送り出した蔦屋重三郎。
お世辞にも、蔦屋重三郎の幼少期は恵まれていませんでした。
蔦屋重三郎の生い立ちやTSUTAYA（蔦屋書店）との関係を紹介します。
蔦屋重三郎ってどんな人？
蔦屋重三郎は江戸時代の版元（出版社）です。
書店兼貸本屋「耕書堂」を開いた安永2年（1773年）から亡くなるまでの寛政9年（1797年）の約25年間。
浮世絵や洒落本、黄表紙などを出版しました。
蔦屋重三郎の生い立ち
蔦屋重三郎は寛延3年（1750年）生まれ。
父・丸山重助と母・廣瀬律与の間に誕生しました。
混乱を避けるため、こちらでは蔦屋重三郎と記載します。
父・丸山重助は尾張、母・廣瀬律与は江戸の出身で親類の多い吉原に移り住みました。
吉原は現在の東京都台東区千束4丁目、3丁目の一部にあった遊廓で、幕府公認の遊女屋が集まっていました。
叔父・喜多川氏の養子になる
蔦屋重三郎が7歳の頃、両親が離縁。
なんということか、二人は蔦屋重三郎を置いて、吉原を離れてしまいます。
身寄りがなくなった蔦屋重三郎は叔父・喜多川氏の養子になりました。
後に蔦屋重三郎が出会う喜多川歌麿の通称の由来になったといわれています。
五十間道に「耕書堂」を開く
蔦屋重三郎の義兄・蔦屋次郎兵衛は「五十間道」と呼ばれる吉原大門（入口）で茶屋を経営していました。
安永2年（1773年）、蔦屋重三郎は茶屋の軒先を借りて、書店兼貸本屋「耕書堂」を開きます。
耕書堂の主力商品は「吉原細見」。
「吉原細見」を独占販売していたのが、地本問屋の鱗形屋孫兵衛です。
① 春・秋の年2回刊行していた
② 遊女の出入りが激しかった
ため、情報が古かったり、間違ったりしていました。
でも、独占販売をいいことに、鱗形屋孫兵衛は情報を更新、訂正しませんでした。
そこで、吉原細見の改所に手を挙げたのが蔦屋重三郎。
自分が最新の情報を収集して編集するから、「細見嗚呼御江戸」を改定させてほしい。
と頼み込んだんです。
鱗形屋孫兵衛は蔦屋重三郎の申し出を受け入れ、蔦屋重三郎は「細見嗚呼御江戸」の改所を進めます。
できるだけ多くの人に手に取ってもらおうと、人気浄瑠璃作家・福内鬼外に序文の執筆を依頼。
これが話題となり、蔦屋重三郎はプロデュースとマーケティングの才能を開花させました。
遊女評判記「一目千本」、「籬の花」を出版する
その後、遊女評判記「一目千本」、「籬の花」を出版します。
「青楼美人合姿鏡」を出版する
安永5年（1776年）、地元問屋・山崎金兵衛とタッグを組み、錦絵本「青楼美人合姿鏡」を出版します。
① 「一目千本」で一緒に仕事をした北尾重政
② 山崎金兵衛のツテで知り合った勝川春章
を絵師に起用した「青楼美人合姿鏡」は豪華な多色摺。
吉原にある13の妓楼で人気の68人の遊女を、四季と共に色鮮やかに描いた入銀物でした。
なんと、蔦屋重三郎自ら序文を執筆！
蔦屋重三郎が主導権を握って刊行したことが判ります。
書籍商として独立する
安永6年（1777年）、書籍商として独立。
安永9年（1780年）、作家・朋誠堂喜三二の黄表紙（挿絵が多い小説本）を出版します。
以降、山東京伝や大田南畝、朱楽菅江や恋川春町、森島中良らと親交を深めます。
そして、戯作や狂歌本（社会風刺の短歌の挿絵を入れた本）を次々と出版しました。
日本橋通油町に進出し、地本問屋に成長する
天明3年（1783年）には、江戸の地本問屋・丸屋小兵衛の店を購入。
一流版元の並ぶ日本橋通油町（現在の東京都中央区日本橋大伝馬町）に進出します。
吉原に開いた店は手代・徳三郎に任せ、通油町の耕書堂を本店としました。
この時、蔦屋重三郎は通油町に実父母を招いたといわれています。
その後、
・洒落本（遊廓での遊び方を記した本）
・黄表紙
・狂歌本
・絵本
・錦絵（多色刷りの浮世絵）
などの企画、制作、販売を手がけ、江戸指折りの地本問屋に成長しました。
浮世絵では、当時無名だった喜多川歌麿の名作を世に送り出し、栄松斎長喜や東洲斎写楽などを育てました。
また、葛飾北斎、鳥居清長、渓斎英泉、歌川広重などの錦絵を出版しました。
48歳で亡くなる
ところが、天明7年（1787年）に田沼意次が失脚。
老中・松平定信による寛政の改革が始まると、風紀の取り締まりが厳しくなります。
寛政の改革によって、蔦屋重三郎は商売の規模を縮小する他ありませんでした。
でも、曲亭馬琴や十返舎一九などの有名画家を手代として雇い、芸術の灯を消さないよう努めました。
寛政5年（1793年）夏、松平定信が辞職すると、喜多川歌麿の美人大首絵を刊行。
また、喜多川歌麿が他の版元とタッグを組むようになると、東洲斎写楽の役者絵を刊行します。
寛政9年（1797年）、脚気を患った蔦屋重三郎は48歳で亡くなります。
通称・蔦屋重三郎は番頭である勇助が継ぎ、文久元年（1861年）まで続きました。
蔦屋重三郎とTSUTAYA（蔦屋書店）の関係
蔦屋重三郎が版元だと知って、
TSUTAYA（蔦屋書店）と何か関係があるのでは…
と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
TSUTAYA（蔦屋）の創業は昭和58年（1983年）で、大阪府内で蔦屋書店1号店が誕生しました。
創業者・増田宗昭氏が店名を「蔦屋書店」とした由来は2つあります。
TSUTAYA創業者の祖父の経営していた置屋の屋号が「蔦屋」だった
増田宗昭の祖父は増田組を立ち上げ、土木建築を請け負っていました。
そして、土木建築業の傍ら、芸者や遊女を紹介する置屋を経営していました。
その置屋の屋号は「蔦屋」。
増田宗昭氏は置屋の屋号「蔦屋」を使用して、「蔦屋書店」としました。
TSUTAYA創業者が蔦屋重三郎にあやかった
「蔦屋書店」が誕生した後、増田宗昭氏の知人が次のようにアドバイスします。
「数多くの作品を世に送り出した蔦屋重三郎にあやかった」と言うほうが好印象では？
「蔦屋書店」は増田宗昭の祖父が経営していた置屋の屋号に由来しています。
ただ、「江戸時代に活躍した蔦屋重三郎の精神も関係している」と言っても過言ではないかもしれませんね。
まとめ：蔦屋重三郎が江戸時代の作品を現代に残した！
蔦屋重三郎の生い立ちやTSUTAYA（蔦屋書店）との関係をを紹介しました。
両親の離縁により、7歳で叔父の養子になった蔦屋重三郎。
「細見嗚呼御江戸」の改所を皮切りに、プロデュースとマーケティングの才能を開花させました。
私達が江戸時代の本や絵を楽しめるのは蔦屋重三郎のおかげですね。
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