豊臣秀吉の治世で始まった朱印船貿易は、江戸幕府を開いた徳川家康の治世で最盛期を迎えました。
何故、徳川家康は朱印船貿易に注力したのでしょうか。
徳川家康が朱印船貿易を行った目的と形成された日本町を紹介します。
朱印船貿易とは?
教科書に登場する朱印船貿易。
朱印船貿易が始まる前に、
・南蛮貿易
・日明貿易
などが行われていましたね。
そのため、混乱してよく覚えられなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここで、朱印船貿易について、簡単におさらいしておきましょう。
朱印船貿易とは、16世紀末から17世紀初めにかけて行われた海外貿易です。
朱印状を乗せた船を「朱印船」と呼んだことが貿易の名前の由来です。
貿易相手国は、安南(ベトナム)、シャム(タイ)、ルソン(フィリピン)、カンボジア、バタビア(ジャカルタ)、ビルマ(ミャンマー)、台湾など、東南アジアの国がメインでした。
徳川家康が朱印船貿易を行った目的
紹介したように、朱印船貿易は豊臣秀吉の治世で始まりました。
戦国時代から江戸時代へと時代が移り変わっても、徳川家康が朱印船貿易を行った目的は3つあります。
外国と和平を保つため
文禄20年(1592年)、慶長2年(1597年)の2度にわたって、豊臣秀吉は朝鮮に出兵しました。
江戸幕府を開いた徳川家康は幕府をトップとして、幕府の命令のもと、大名に領地を任せる仕組み(幕藩体制)をつくりました。
つくったといっても、幕藩体制はまだまだ不安定。
外国が日本を侵攻したら、体制は揺らいでしまいます。
そこで、幕藩体制を確立するために、諸外国と平和外交を行うべきだと判断しました。
利益を得るため
朱印船貿易の最大の目的は経済的利益です。
紹介したように、貿易を行うには、幕府が発行した許可証・朱印状が必要でした。
朱印状は無料ではありません。
朱印状を手に入れるためには、発行手数料を支払わなければいけませんでした。
朱印状を発行する度に、幕府は利益を得ていたんですね。
幕府は朱印状を発行して利益を得ていましたが、その対価として、貿易の安全を保障しました。
海賊船、密貿易船と勘違いされて、攻撃を受けるケースもしばしば。
そこで、活躍したのが朱印状です。
朱印状は江戸幕府がその船の貿易を許可している証。
朱印状には、他国の攻撃から船を守るという役割があったんですね。
良質な生糸を手に入れるため
今から5000年以上前に蚕の繭が発見された中国では、蚕産業が盛んでした。
歴史が古いこともあって、蚕の繭から取れる中国の生糸はとても良質なものでした。
幕府は明(中国)から輸入した生糸を一括して買い取り、京都の商人に優先的に販売しました。
京都の絹織物といえば、西陣織が有名ですよね。
良質な生糸が大量に輸入されたことは、西陣織が大きな発展を遂げるきっかけとなりました。
ところで、明(中国)から生糸を輸入していたと紹介しました。
でも、日本の貿易相手国の中に、明は入っていません。
豊臣秀吉の行った朝鮮出兵により、日本は李氏朝鮮だけでなく、明とも国交を断絶していました。
日本人と中国人はわざわざ第三国(東南アジアの国)まで出向き、取引を行っていました。
日本にとって、明は隣国。
朝鮮出兵を行ったことで、明より遠い東南アジアにわざわざ出向いて取引を行わなければいけなくなるなんて、朱印船貿易を始めた豊臣秀吉も想像できなかったでしょうね。
形成された日本町
当初、日本人は貿易相手国に取引開始から終了までの短期間滞在していました。
でも、朱印船貿易が盛んになると、海に面した地域を中心に、日本人がそのまま移り住むようになり、東南アジア各地に日本人町がつくられました、
② ルソンの都・マニラには3000人もの日本人
が住んでいたといわれています。
寛永16年(1639)年、江戸幕府の第3代将軍・徳川家光は鎖国令を出します。
そのため、日本町に住んでいた日本人は帰国できなくなり、日本から物資を調達できなくなりました。
また、貿易も行われなくなり、日本人が新たに移住しなくなったため、日本町は衰退しました。
現在も日本町の面影の残っている地域があり、その地域は観光名所となっています。
まとめ:朱印船貿易は利益と生糸をもたらした!
徳川家康が朱印船貿易を行った目的と形成された日本町を紹介しました。
豊臣秀吉が始めた朱印船貿易は、徳川家康の治世で最盛期を迎えました。
朱印船貿易は江戸幕府に利益をもたらした他、良質な生糸を大量に輸入できたことで、絹織物の発展に大きく貢献しました。
平安時代に誕生した着物を私達が楽しめるのは、徳川家康が朱印船貿易に注力したおかげですね。
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