日本から中国に派遣された使者として遣隋使や遣唐使が有名ですが、それよりも前から、日本は中国に使者を派遣していました。
例えば、宋（420年から479年）にも、倭の五王によって日本から使者を派遣した記録が残っています。
倭の五王の正体、いつからいつまで、どんな目的で朝貢したのかを紹介します。
倭の五王って誰？
倭の五王とは、南朝・宋について書かれた史書「宋書」に登場する、倭国の5人の王・讃、珍、済、興、武を指します。
5人のうち、正体の判っている王は3人で、済は第19代允恭天皇、興は第20代安康天皇、武は第21代雄略天皇に該当するといわれています。
また、讃は第15代応神天皇、第16代仁徳天皇、第17代履中天皇の3人の誰か、珍は第18代反正天皇に該当するのではないかといわれています。
いつからいつまで、どんな目的で朝貢したの？
倭の五王はいつからいつまで、どのような目的で朝貢したのでしょうか。
いつからいつまで朝貢したの？
倭国が宋に使者を初めて派遣したのは421年ですが、その前から、宋を建国した劉裕とは交流があったと考えられています。
420年、劉裕が東晋の第11代皇帝・恭帝から禅譲されて、宋を建国して初代皇帝・武帝として即位すると、翌年421年に、倭国の王・讃は宋に使者を派遣し、安東将軍倭国王という官職を与えられました。
425年、倭国は宋に司馬・曹達を派遣し、第3代皇帝・文帝（劉義隆）に貢物を献上しました。
430年、倭国は宋に使者を派遣した後、王・讃が亡くなったため、後を継いだ王・珍は438年に使者を派遣して、「使持節都督倭・百済・新羅・任那・秦韓・慕韓六国諸軍事安東大将軍倭国王」と自ら称して、任命するよう文帝に求めました。
443年、倭国の王・済は使者を派遣し、文帝は済を珍の後継者と認めて、讃や珍と同じ安東将軍倭国王の官職を与えました。
451年、文帝は済に、「使持節都督倭・百済・新羅・任那・秦韓・慕韓六国諸軍事安東大将軍倭国王」という438年に珍が求めた官職を与えました。
460年、済は第4代皇帝・孝武帝（劉駿）に使者を派遣して、貢物を献上しました。
462年、倭国の王・興は使者を派遣し、孝武帝は興を済の後継者と認めて、讃や珍、済と同じ安東将軍倭国王の官職を与えました。
477年、倭国の王・武は宋に使者を派遣し、武は自ら「使持節都督倭・百済・新羅・任那・秦韓・慕韓六国諸軍事安東大将軍倭国王」と称しました。
478年、武は「開府儀同三司」と自ら称して、任命するよう第8代皇帝・順帝（劉順）に求めました。
また、武は「倭国から使者を派遣することは難しい」と上表しました。
ところが、順帝は武が自ら称していた「使持節都督倭・新羅・任那・加羅・秦韓・慕韓六国諸軍事安東大将軍倭王」という官職を与えるだけで済ませました。
以降、倭国が宋に使者を派遣することはありませんでした。
どんな目的で朝貢したの？
倭国が宋に使者を派遣した目的を考えるうえで、注目したいのが、438年に倭国の王・珍が任命するよう求めた官職「使持節都督倭・百済・新羅・任那・秦韓・慕韓六国諸軍事安東大将軍倭国王」の「倭・百済・新羅・任那・秦韓・慕韓六国諸軍事安東大将軍倭国王」です。
六国とは、倭国、百済、新羅、任那、秦韓、慕韓です。
当時、朝鮮半島には、百済、新羅、高句麗の3国の他、任那、秦韓、慕韓、加羅の4国が存在していて、倭国は加羅と友好的な関係を築き、加羅から鉄資源を得ていました。
ところが、高句麗、百済、新羅が勢力を拡大し、朝鮮半島内で争いが起きるようになりました。
加羅と友好的な関係を築き、加羅から鉄資源を得ていた倭国は加羅をサポートしなければいけません。
そこで、宋から百済、新羅、任那、秦韓、慕韓の5国よりも倭国が高い地位であると認められるよう、宋に使者を派遣し、貢物を献上して、取り入っていたんです。
百済、高句麗と同じ大将軍の地位を確保したかった倭国は「安東将軍」ではなく「安東大将軍」の官職を求めました。
珍が宋に使者を派遣して、「使持節都督倭・百済・新羅・任那・秦韓・慕韓六国諸軍事安東大将軍倭国王」に任命するよう文帝に求めた438年から13年の時を経て、451年、済は「使持節都督倭・百済・新羅・任那・秦韓・慕韓六国諸軍事安東大将軍倭国王」に任命されました。
倭国は高句麗より優位に立つことはできませんでしたが、朝鮮半島の中でも、宋が高句麗を特に恐れていたと考えると、倭国は百済、新羅より優位に立つのが限界だったのかもしれませんね。
まとめ
倭の五王の正体、いつからいつまで、どんな目的で朝貢したのかを紹介しました。
倭の五王とは、讃、珍、済、興、武の5人の王を指し、このうち、済は第19代允恭天皇、興は第20代安康天皇、武は第21代雄略天皇に該当するといわれています。
劉裕が宋を建国して初代皇帝・武帝として即位した翌年421年から、約55年にわたって、倭国は百済や新羅より高い地位を求めて、宋に使者を派遣し続けました。
日本にとって、朝鮮半島の3国がどれだけ驚異的な存在だったか、そして、宋がどれだけ心強い存在だったかが分かりますね。
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