北魏の全盛期を築いたといわれている第6代皇帝・孝文帝(元宏)。
孝文帝は遷都したり、さまざまな改革を行ったりして、胡族を漢化しました。
孝文帝(元宏)が平城から洛陽に遷都した理由と行った改革を紹介します。
孝文帝(元宏)が平城から洛陽に遷都した理由
北魏の初代皇帝・道武帝(拓跋珪)の行った遷都により、398年から平城(山西省大同市)は都であり続けましたが、493年、孝文帝は平城から洛陽に遷都しました。
その理由は4つあります。
軍事的に有利だから
孝文帝は南朝・斉を討伐したいと考えていました。
斉を攻めるなら、北に位置する平城より、南に位置する洛陽に遷都するのが効率的だったからです。
平城から洛陽に遷都したのは孝文帝ですが、実は、孝文帝が即位する前から、南朝を討伐する目的で、洛陽に遷都してはどうかという話が持ち上がっていました。
では、何故、孝文帝以前に即位した皇帝は洛陽に遷都しなかったのでしょうか。
それは、漢民族にナメられることを恐れたからです。
洛陽には多くの漢民族が住んでいました。
漢民族に比べて、拓跋氏の出身部族である鮮卑族は少数。
鮮卑族が少数で、軍事力が弱いとバレたら、漢民族が襲い掛かってくるかもしれません。
孝文帝が洛陽に遷都したのは、孝文帝が漢民族は脅威ではないと判断したからです。
北魏の第4代皇帝・文成帝(拓跋濬)は、漢民族を各地の軍隊に配置し、漢民族の力を上手に分散させていました。
万が一、鮮卑族が少数だと漢民族にバレても、漢民族に太刀打ちできる環境が整っていたんですね。
交通の便がいいから
洛陽は黄河抗原と河北平野に面していて、食糧や武器の運搬に欠かせない都市でした。
自由に建設できたから
五胡時代の戦乱によって、洛陽は壊滅状態にありましたが、言い換えれば、新たに使い勝手のいい施設を建設しやすい更地でした。
支配力を強化したかったから
平城から洛陽に遷都したら、平城に住んでいた鮮卑族の権力者は洛陽に移り住まなければいけません。
住み慣れた故郷を離れて、慣れない土地で暮らすのはストレスがたまりますよね。
孝文帝は鮮卑族の権力者を移住させることで、権力者の権力を削ぎました。
交通の便がいい洛陽に住めば、馬に乗る必要もありません。
鮮卑族は遊牧民族でしたが、馬に乗る機会を失った鮮卑族の馬術は低下しました。
また、鮮卑族は独自の文字をもっていませんでしたが、多くの漢民族が住む洛陽に移り住めば、漢民族が使用している漢語を覚えなければいけません。
漢民族との融合を望んでいた孝文帝は、鮮卑族が漢語を覚えざるを得ない環境を築いたんですね。
孝文帝(元宏)が行った改革
471年に即位した孝文帝は、均田制や三長制といった、義理の祖母にあたる馮太后(文成文明皇后)の行った改革に引き続き取り組みました。
その他、次のような独自の改革を行いました。
姓の改革
鮮卑族を含む胡族の姓を禁止して、漢民族の姓に改めさせました。
姓の他、胡族の言葉や衣服を禁止して、漢民族の言葉を使用するように、また、漢民族の衣服を着るように命じました。
官制の改革
孝文帝は493年、495年、498年から499年の3回にわたって、官制の改革を行いました。
最初の改革では、今まで使用していた官名のほとんどを廃止して、漢民族の官名を採用しました。
官名のほとんどを廃止したのであって、胡族固有の官名もまだ存在しました。
3回目の改革では、官名全てを漢民族のものに変更し、胡族固有の官名は完全に消滅しました。
また、貴族を積極的に登用して、貴族制を確立しました。
姓族分定
漢民族が官吏として出仕する場合、家柄が区分の基準となっていました。
少数の官吏と共に朝廷を運営し、中央に権力を集中させたかった孝文帝は、家柄の良い貴族を登用しようと考えました。
ところが、胡族には、家柄といった身分の高低を計る基準がありませんでした。
そこで、漢民族と同じように、胡族間にも家柄を設けることにしました。
胡族の中でも、部族大人(部族長)の後裔であるかないか、北魏の建国以来、どのような官爵を与えられたかといった2つの観点で序列化。
孝文帝によって設けられた家柄によって貴族となった胡族は、漢民族の上流階級と結婚し、胡族と漢民族の融合が進みました。
馮太后の行った改革と孝文帝の行った改革は、どのように違うのでしょうか。
一方、孝文帝は皇帝に権力を集中させるために、漢化政策に基づいた改革を行いました。
孝文帝の行った改革は、国家の性格そのものを変えたんですね。
まとめ
孝文帝(元宏)が平城から洛陽に遷都した理由と行った改革を紹介しました。
孝文帝は平城から洛陽に遷都し、鮮卑族に対する支配力を強化した他、姓の改革、官制の改革、姓族分定といった漢化政策に基づいた改革を行いました。
孝文帝は33歳の若さで崩御しましたが、北魏の全盛期を築くほど、優秀な皇帝だったんですね。
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