受験前には、試験会場・時間、持ち物を必ずチェックしますよね。
中国で約1300年間も続いた官吏登用試験・科挙は持ち物がいっぱいありました。
科挙の試験会場、持ち物と時間、不正の種類と防止策を紹介します。
科挙の試験会場はどこ?
科挙の試験会場を貢院といいます。
貢院は中国の複数の都市に設置されましたが、その中でも最大の試験会場は南京にある江南貢院でした。
現在では科挙博物館として、合格者が着る服やカンニンググッズなどを展示しています。
貢院は石壁で造られた簡素な建物。
隣や前後の受験者の答案が見えないように、左右と背面は壁で囲まれていました。
また、受験者数が多いため、与えられたスペースはなんと幅1mの空間でした。
掃除は行き届いておらず、壁にはカビが、屋根には雑草が生えていました。
石壁で造られた貢院は雨漏りも少なくありません。
☑ 書いた文字が雨に濡れてにじむと、試験官が正しく認識してくれない
☑ 答案用紙が汚れただけで、失格になる
ため、受験者は身体を張って、雨から答案用紙を守りました。

雨から答案用紙を守りながら、時間内に解答しなければいけない科挙。
知力だけでなく、集中力や体力も試される試験だったんですね。
科挙の持ち物と時間は?
受験者の持ち物は、
☑ 硯や墨、水差しなど、文字を書くのに必要な道具
☑ 食料と調理道具
☑ 布団
実は、科挙は私達のように数時間で終わる試験ではありません。
貢院に2泊するんです。
そのため、受験者は大荷物を貢院に持ち込みました。

布団を持ち込んでも、実際には、布団を敷いて寝られなかった受験生がほとんど。
隣から光が漏れるため、他の受験生が寝ずに解答していることがわかりました。
「遅れをとってはいけない」と焦って、寝られなかったんですね。
不正の種類と防止策
科挙ではどのような不正が行われたのでしょうか。
また、不正を防ぐために、どのような工夫がされていたのでしょうか。
不正の種類別に防止策をみていきましょう。
カンニング
受験の代表的な不正といえばカンニングですよね。
科挙でもカンニングする受験者が多くいました。
科挙は皇帝直々に行う試験なので、科挙で不正を働くことは皇帝に背く行為に該当します。

そのため、カンニングが発覚すると、最悪の場合、死刑に処されました。
でも、科挙に合格すれば、自分一人だけでなく、一族が将来を保証されます。
バレなければいいと、下着や手のひらサイズのメモ帳に文字をびっしり書き込む受験者もいました。
受験者のカンニングが発覚すると、試験官も罪に問われます。
そこで、貢院に入る前に、受験者一人に対して、4人の兵が持ち物検査を行いました。
カンニンググッズだと思われるものを見つけたら、報酬がもらえるため、検査は念入りに行われました。

服を全て脱がせることはもちろん…
食料である饅頭を割って、餡の中に隠していないかを調べる徹底ぶり。
でも、こんなに厳しい持ち物検査が行われるのに、検査は一回では終わりません。
入り口で持ち物検査を行った後、席に着くまでにもう一度持ち物検査が行われるんです。
2回目の持ち物検査で不正が見つかると、最初の持ち物検査を行った兵が罪に問われました。
賄賂
ニュース番組でよく耳にする裏口入学。
学長や担当者にお金を渡して、点数を割増してもらうなどの不正ですね。
科挙でも試験官に賄賂を渡して、カンニングを見逃してもらう受験者がいました。
また、試験官が外部と接触しないように、任命されてから科挙の採点が終わるまで、貢院から出られないようにしました。
その他、答案用紙を回収してから採点が終了するまで、答案用紙の受験者氏名欄を紙で覆うことも。
賄賂を渡しても不正が機能しないような工夫がされました。
替え玉受験
本人確認書類の整っていない昔、科挙では替え玉受験を行う受験者が多くいました。
そこで、明(1368年から1644年)では、名前や年齢の他、身長や顔つきなどの身体的特徴を願書に記入。
受験当日に試験官が受験者本人を見て確認していました。

受験当日まで、出願時の髪や髭の長さを保つのは大変だったと思います。
その他、科挙には段階試験が設けられているので、筆跡鑑定が行われました。
前回の答案用紙と今回の答案用紙を見比べて、筆跡が同じかどうかを鑑定したんですね。
まとめ:科挙は受験者も試験管も一生懸命
科挙の試験会場、持ち物と時間、不正の種類と防止策を紹介しました。
科挙では、カンニング、賄賂、替え玉受験など、現在でも行われている不正が行われました。
科挙は皇帝直々に行う試験なので、科挙で不正を働くと、最悪の場合、死刑に処されます。
それでも不正が行われたのは、科挙に注ぐ情熱がそれだけ強かったんですね。
時の流れと共に移り変わるシステムを理解するのが難しいのに、科挙は歴史の重要用語です。科挙について知りたい方は、宮崎市定著「科挙 中国の試験地獄」がおすすめ。
また、科挙の受験資格、試験内容から不正行為まで網羅されていて、こちらの本一冊で十分理解できます。ぜひ一度、「科挙 中国の試験地獄」を読んでみてください。
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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