630年から始まった遣唐使。
例えば、659年に日本を出発した第4回遣唐使は往路に約5ヶ月、復路に約6ヶ月かかっています。
片道の航海に約半年かかる遣唐使はどこから、どのようなルートで、唐に向かったのでしょうか。
遣唐使の出発地、航路を北路から南路にルート変更した時期と理由を紹介します。
遣唐使の出発地はどこ?
遣唐使の出発地には2つの説があります。
①住吉津を出発地とする説、②那の津を出発地とする説です。
住吉津を出発地とする説
住吉津は現在の大阪市住吉区にありました。
そのため、住吉津は「すみのえつ」と読みます。
住吉津を出発して、大阪湾に通じる細江川を下り、難波津(大阪市中央区高麗橋付近)に向かいます。
その後、瀬戸内海を通って、那の津(博多港)に移動しました。
必要に応じて、長門島に寄港したといわれています。
那の津を出発地とする説
紹介したように、遣唐使は住吉津を出発した後、瀬戸内海を通って、那の津に移動しました。
那の津から出国したため、那の津を出発地とするのが正式ではないかといわれています。

663年に起きた白村江の戦いで、日本は唐と新羅の連合軍に敗れました。
唐と新羅を警戒した日本は、那の津の機能を大宰府(福岡県太宰府市)に移します。
そのため、第5回遣唐使以降は大宰府を出発地とするのが正しいのかもしれません。
航路を北路から南路にルート変更したのはいつ?なぜ?
遣唐使の航路には、北路と南路の2つのルートがありました。
① 北路
北路の出発地は住吉津、あるいは、那の津です。
那の津で最後の準備を整えた後、新羅を経由して唐に渡りました。
② 南路
南路の出発地も住吉津、あるいは、那の津です。
ただ、紹介したように、第5回遣唐使以降は大宰府を出発地とするのが正しいかもしれません。
大宰府で最後の準備を整えた後、五島列島を経由して唐に渡りました。
いつ?
北路は702年より前に使用され、南路は702年より後に使用されました。
つまり、遣唐使の航路が北路から南路にルート変更したのは702年ということになります。
なぜ?
朝鮮半島から最も近い島といわれている五島列島。
新羅と五島列島のどちらを経由しても、大きな違いはなさそうですよね。
にも関わらず、なぜ、702年に北路から南路にルート変更したのでしょうか。
北路を使用する目的は新羅で再準備するため
どこも経由せずに、那の津から唐に直接向かえば、航海日数は少なく済みますよね。
でも、新羅で準備を再び整えて向かうほうが安全性が高かったため、北路を使用したと考えられています。

新羅だけでなく、百済を経由した遣唐使もいました。
百済には造船技術があったため、船に問題が発生した時に頼ったといわれています。
南路を使用する目的
南路を使用する目的は2つあります。
揚州で待ち合わせるため
当時の航海は、現在のように、到着地をピンポイントで絞り込むことができません。
北は楚州(江蘇省淮安市)から南は明州(浙江省寧波市)まで、到着する港はバラバラ。
4隻の遣唐使船が揃って、一つの港に着くことはなかなかありませんでした。
でも、到着した遣唐使から順に、長安に向かうとなると、統率が取れません。
そのため、遣唐使は揚州(江蘇省揚州市)で待ち合わせをしました。
それは、隋の第3代皇帝・煬帝(楊広)の建設した大運河があったからです。
南は揚州、北は涿州(河北省保定市)、西は汴州(河南省開封市)まで、船に乗ったまま移動が可能でした。
越州を出発してからわずか2週間で、約1100kmも離れた洛陽に到着することができました。
新羅を避けるため
唐と新羅は協力して、660年には百済を、668年には高句麗を滅ぼしました。
百済と高句麗は日本に友好的だったため、唐は日本を警戒しました。
百済を征討して、情勢が落ち着く661年までの2年間、帰国が許されませんでした。
新羅を経由して唐に向かうと、新羅滞在中に遣唐使が危険にさらされる可能性があります。
遣唐使が安全に航海できるよう、南路が用いられました。
まとめ:暴君・煬帝の大運河が遣唐使に大活躍
遣唐使の出発地、航路を北路から南路にルート変更した時期と理由を紹介しました。
那の津や大宰府を出発し、唐を目指した遣唐使。
遣唐使は新羅や煬帝がつくった大運河を利用したり、時には新羅を避けたりして、唐にたどり着きました。
那の津は現在の博多港です。
博多港から海を眺めると、遣唐使船が中国に渡る光景を想像できるかもしれませんね。
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遣唐使が日本に持ち帰った物から与えた影響まで、知りりたいことがコンパクトにまとめられています。
ぜひ一度、「遣唐使」を読んでみてください。
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