中国史上唯一の女帝である則天武后(武則天)。
則天武后に政治手腕があったことは確かですが、陰で支えていたのが宰相・狄仁傑です。
狄仁傑とは、どのような人物なのでしょうか。
狄仁傑の生い立ち、有名な故事や評価を紹介します。
狄仁傑の生い立ち
狄仁傑は630年生まれで、并州(後の太原府。山西省太原市)出身。
職種を問わず大活躍する
狄仁傑は科挙の明経科に合格した後、汴州(河南省開封市)参軍、并州法曹参軍を務めました。
その後、大理丞として罪の糾弾や裁判に携わり、676年には侍御史に任命されました。
更に、戸部尚書の下の度支郎中として、財務に携わりました。
法律と財務に詳しく、仕事のできる狄仁傑。
686年には寧州刺史、688年には江南道巡撫大使になります。
狄仁傑の能力と人柄がいかに高い評価を得ているかが分かりますね。
また、各地を巡っている間に、邪教の排除を行いました。
張光輔と対立して、司馬に降格される
江南道巡撫大使を務めた後、豫州(河南省駐馬店市)刺史になります。
この頃、太宗の第8皇子・李貞が反乱を起こし、この反乱を鎮圧するために、唐軍が豫州にやってきました。
狄仁傑に会った唐軍の最高責任者・張光輔は、なんと狄仁傑に賄賂を要求。
曲がったことが大嫌いな狄仁傑は張光輔の要求を拒否します。
張光輔は「唐軍の最高責任者である私を馬鹿にしているのか!」と怒りました。
更に、張光輔は既に降伏した反乱軍を殺し、手柄を上げようとします。
狄仁傑は「降伏した反乱軍を殺すのは道理に反する」と言って、張光輔を責めました。
唐への忠誠心がない。
そう判断された狄仁傑は洛州司馬に降格されました。
則天武后(武則天)に見出されて、宰相になる
これまで高宗、中宗、睿宗に仕えてきた狄仁傑。
691年、以前から狄仁傑の才能を認めていた則天武后により、都に呼び戻されて、宰相に抜擢されました。

則天武后に見出されて、ようやく日の目を見たんですね。
692年には、酷吏・来俊臣によって、謀反の罪を着せられ、彭沢(江西省九江市)の県令に左遷されます。
でも、数々の手柄を上げて、697年、宰相に返り咲きました。
700年には、皇帝の詔勅の起草を行う内史に任命されましたが、その年に70歳で亡くなりました。
則天武后は狄仁傑を「国老」と呼び、敬意を表しました。
狄仁傑は年齢や病気を理由に引退することを願い出ましたが、則天武后は認めませんでした。
則天武后にとって、狄仁傑がどれだけ大切な存在だったかが分かりますね。
有名な故事は?
自家薬籠という故事をご存じでしょうか。
狄仁傑には、元行沖という物事をはっきり言う部下がいました。
ある日、元行沖は、
・私は気を遣わずに思ったことをそのまま言う
・それでも、私をそばに置いてほしい
と言いました。

部下が上司に反対意見を述べると、嫌な顔をされるもの。
元行沖は自分の性格を気にしていたのかもしれません。
すると、狄仁傑は「そんなことを言わなくても、元行沖は私の大事な部下だ」と言います。
元行沖を自宅の薬箱に入れておかなければいけない、苦い良薬に例えてねぎらったんです。
故事になぞらえて、部下をねぎらうなんて、博識の狄仁傑だからこそできたことですね。
狄仁傑の評価
日本では馴染みがないかもしれませんが、狄仁傑は中国で大人気。
推理ドラマの主人公になるなど、高い評価を得ています。
実際、狄仁傑が則天武后に推薦した人達は皆、唐の時代に大活躍しました。
例えば、張柬之という宰相。
690年に則天武后が皇帝に即位し、国号を周と改め、皇室は李氏から武氏に変わりました。
狄仁傑が亡くなった後、則天武后は張兄弟という美少年を溺愛し、政務が滞ってしまいました。
国の危機だと判断した張柬之は、中宗に譲位を求めるクーデターを起こします。
この時、一緒にクーデターを起こした桓彦範、敬暉も、狄仁傑が推薦した人物です。
クーデターは成功。
則天武后は中宗に譲位し、唐は復活して、皇室は武氏から李氏に戻りました。

張柬之達がクーデターを起こさなければ、唐は則天武后の代で滅びていたかもしれません。
また、狄仁傑が推薦した姚崇は、則天武后のもとだけでなく、玄宗のもとでも大活躍。
開元の治という国が安定した時代を築きました。
狄仁傑は唐の繁栄の陰の立役者だったんですね。
まとめ:狄仁傑は人を見る目もある
狄仁傑の生い立ち、有名な故事や評価を紹介しました。
科挙に合格した狄仁傑は法務や財務に携わり、則天武后によって宰相に抜擢されました。
また、自家薬籠という故事を用いて、部下をねぎらうなど、狄仁傑ならではのエピソードを残しました。
そんな狄仁傑はドラマや映画、アニメの主人公になるほど、中国では大人気です。
狄仁傑が推薦した人物は唐の節目のカギを握っています。
そう考えると、この時代にタイムスリップしてみたいと思うのは私だけでしょうか。
中国時代劇を見て、則天武后に興味をもった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
則天武后について知りたい方は、氣賀澤保規著「則天武后」がおすすめ。
則天武后の心理状態が適度に描写され、小説のようにスラスラ読めます。
ぜひ一度、「則天武后」を読んでみてください。
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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