唐と西域の外交に尽力した裴行倹。
裴行倹は外交力だけでなく、兵法にも長けていました。
裴行倹がいなければ、唐は突厥や吐蕃から攻められて、もっと早くに滅びていたかもしれません。
裴行倹とはどのような人物なのでしょうか。
裴行倹の生涯を紹介します。
長安県令になる
裴行倹は618年生まれで、絳州(山西省運城市)の出身。
唐の第2代皇帝・太宗の治世に、科挙の明経科に合格し、左屯衛倉曹参軍に任命されました。
そして、当時、左衛中郎を務めていた蘇定方から、兵法を学んだ後、657年、長安県令に任命されました。
則天武后と対立して左遷される
順調に出世していた裴行倹。
ところが、裴行倹は第3代皇帝・高宗に刃向かったため、朝廷から遠ざけられてしまいます。
高宗には、正妻・王皇后がいましたが、側室・則天武后を寵愛していました。
則天武后から「皇后に冊立してほしい」とお願いされた高宗は、王皇后を廃して、則天武后を皇后に冊立しようとしました。
でも、高宗の側近・長孫無忌や褚遂良が大反対。
朝廷は王皇后派と則天武后派に分かれていました。
裴行倹は王皇后派で、長孫無忌や褚遂良と密会を重ね、則天武后を排除する策略を練りました。
すると、大理寺卿・袁公瑜は則天武后の母・楊氏に「裴行倹が長孫無忌や褚遂良と共に、則天武后を排除しようとしている」と密告。
楊氏から報告を受けた高宗は、裴行倹を西州都督府長史に左遷しました。
安西都護になる
665年、裴行倹は安西都護に任命され、西域を統治する仕事を与えられました。
裴行倹は誠実で、道徳を重んじる人。
西域の人々は裴行倹の人柄に惹かれて、唐の支配下に入りました。
669年、裴行倹は都に呼び戻され、司文少卿を務めた後、吏部侍郎に任命されました。
同じく吏部侍郎に任命された李敬玄と共に官吏を登用し、公正な登用方法を褒め称えられ「裴李」と呼ばれました。
西突厥を征討する
676年、吐蕃が唐に侵入し、裴行倹は秦州右軍総管に任命され、高宗の第7皇子・李顕(後の第4代皇帝・中宗)と共に、軍を指揮しました。
ところが、679年、突厥の首長・阿史那都支が吐蕃と同盟を結んでしまいます。
突厥を征討しなければ、唐は吐蕃と突厥の連合軍に攻められてしまうかもしれません。
でも、吐蕃と同盟を結んだだけで、突厥が唐を攻めてきたわけではありません。
大義名分のない唐は、突厥の征討に乗り出すことができませんでした。
また、吐蕃と突厥の両国を征討するとなると、より多くの兵、武器を揃える必要があり、莫大な財源が必要になります。
当時の唐は財政が逼迫していたわけではありませんが、コストをできるだけ削減したい考えは、いつの時代も同じ。
そこで、裴行倹は西部のササン朝ペルシアに注目しました。
首都はクテシフォンといって、現在のイラクのバグダッドの南東に当たります。
ササン朝ペルシアのヤズドガルド3世は、642年に起きたニハーヴァンドの戦いで、イスラム教徒に敗れ、メルブ(現在のトルクメニスタン)に亡命しましたが暗殺され、651年、ササン朝ペルシアは滅亡しました。
ヤズドガルド3世の皇子・ペーローズ3世は東方に駐屯していて、唐に助けを求めてきたんです。
そこで、唐はザランジ(現在のアフガニスタン)にペルシア都督府を設置し、ササン朝ペルシアから逃げた民が唐の領土内に住むことを許可しました。
でも、いつまでも唐の領土内に住まわせるわけにはいきません。
裴行倹はペーローズ3世を送還する目的で、西部の西突厥を征討することにしてはどうかと上奏しました。
高宗は裴行倹にその任務を与え、大義名分を得た裴行倹は西突厥を堂々と征討。
679年、裴行倹は西突厥の首長・阿史那都支を捕らえて、長安に戻りました。
東突厥を征討する前に亡くなる
680年、裴行倹は定襄道大総管に任命され、30万人を超える兵を率いて、北東の東突厥に向かいました。
大軍を恐れた東突厥の首長・阿史那伏念は降伏し、裴行倹は阿史那伏念を捕らえて、長安に戻りました。
でも、阿史那伏念を捕らえたからといって、東突厥が滅亡したわけではありません。
阿史那骨咄禄が首長となり、東突厥を再興させたんです。
682年、東突厥が唐を攻めたため、高宗は裴行倹を金牙道行軍大総管に任命し、東突厥を征討する任務を与えました。
裴行倹は戦闘準備を整えていましたが、疲れがたまったのか、64歳で突然亡くなってしまいました。
これまでの裴行倹の功績を称えて、高宗は幽州都督を追贈しました。
まとめ
裴行倹の生涯を紹介しました。
裴行倹の死後、高宗は幽州都督を追贈しましたが、中宗は揚州大都督を、第9代皇帝・玄宗は太尉を追贈しました。
長い年月が経っても、裴行倹の功績が多くの皇帝から認められたことが分かりますね。
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