
隋王朝の時代から国に保護されていた仏教。
唐王朝では仏教がより浸透し、皇帝や貴族はもちろん、民からも広く信仰されます。
則天武后も仏教を信仰し、時には政治に活用し、権力を拡大、維持しました。
生い立ちや出家経験を含めて、則天武后(武則天)の宗教政策をわかりやすく紹介します。
仏教を信仰した則天武后
則天武后(武照)は、14歳で唐の第2代皇帝・太宗の側室になりました。
宮廷入りした則天武后は若くして寵愛を受けます。
ただ、残念ながら子どもに恵まれず、太宗の死後は先例に従って出家。
その後第3代皇帝・高宗(李治)に見初められるまで、寺院で生活しました。
華やかな宮廷から一転して、寺院に身を置くことになった則天武后。
将来のみえない則天武后にとって、仏教は精神的な支えだったと考えられています。
高宗に見初められた則天武后は宮廷に戻ります。
その後、正室を蹴落として権力を握りますが、則天武后は仏教を信仰し続けました。
仏教を政治利用した則天武后
紹介したように、唐王朝において、仏教は民から広く信仰されていました。
シルクロードを通じて、インドや中央アジアから僧侶が訪れます。
多くの経典が翻訳されると、アジア全体で仏教文化が大きく花開きました。
このような環境の中で、仏教は政治や社会にも影響力をもつようになりました。

仏教が影響力をもっているなら、仏教を活用して世の中を安定させよう。
仏教をよく理解していた則天武后は、仏教を政治に活用することにしました。
宗教と政治の結びつき
唐王朝において、仏教は政治や社会にも影響力をもっていたと紹介しました。
中国では、皇帝は「天命」を受けた唯一の存在だとされていました。
そのため、皇帝は仏教を正統性や権威づけに利用してきました。
また、仏教の「来世」や「救済」などの思想は、民から強く支持されていました。
皇帝が仏教を手厚く保護することで、民は皇帝を信頼してきました。
弥勒菩薩と自らの結びつけ
仏教を皇帝による統治の正統性や権威づけに利用する。
仏教を手厚く保護して、民から信頼を得る。
これは隋王朝の楊氏や唐王朝の李氏が行ってきたことです。

男尊女卑の時代に、女性が皇帝になるなら、今までと同じことをやっていてはいけない。
今までの皇帝とは異なる印象を与えたい。
そこで、則天武后は、自らを未来に現れる救世主・弥勒菩薩と結びつけました。
弥勒菩薩は乱れた世を救い、新しい理想社会をもたらす存在とされています。

自身と弥勒菩薩を結びつけることで、
「則天武后の統治は、仏の意思に基づくものである」
と示し、反対勢力を抑えて、民の支持を得ようとしました。
経典や予言を利用した権威づけ
弥勒菩薩と結びつけたところで、それを示す証拠がなければ民は信じません。

そこで、則天武后は、
「則天武后こそ、仏の意志によって選ばれた統治者である」
という内容を含んだ仏教経典や予言を広げます。
文字を読めない人々に対しては、僧侶が説法を通じてその内容を伝えました。
このような宗教活動によって、則天武后は権威づけに成功しました。
則天武后の宗教政策
紹介したように、則天武后は仏教を統治の正統性や権威づけに利用しました。
則天武后は仏教を利用して、どのような政策を行ったのでしょうか。
大雲寺の保護|権力を全国に拡大した
則天武后は諸州に大雲寺を建立し、国の保護下に置きました。
大雲寺は則天武后の皇帝としての正統性を示す寺院として機能します。
寺院のネットワークを通じて、則天武后の権力は全国に広がっていきました。
殺生禁止令|慈悲深い印象を与えた
則天武后は畜類の殺生や魚の捕獲を禁止する政策を打ち出しました。
これは仏教の「不殺生」の教えに基づくものです。
この政策は、民に対して「則天武后=慈悲深い統治者」という印象を与えました。
寺院と僧侶の優遇|仏教を統治の土台に
則天武后は寺院の建立を積極的に進め、僧侶を手厚く保護しました。
これにより、仏教勢力は更に拡大していきます。
僧侶たちは各地で説法を行い、則天武后の正統性を説きました。
こうして仏教は、信仰の枠を超えた政治的な影響力をもつ存在に。
則天武后の統治を支える重要な土台になっていきました。
まとめ:仏教利用は則天武后の覚悟
出家を機に仏教を深く信仰した則天武后。
弥勒菩薩や経典の活用、大雲寺の建立などを通じて、自らの正統性を確立しました。
また、殺生を禁止して慈悲深い印象を与え、民の支持を得ました。
仏教を政治に利用した皇帝は他にもたくさんいます。
ただ、則天武后は自身を弥勒菩薩と結びつけ、経典や予言を用いて浸透させました。
女性として国のトップに立った則天武后の強い覚悟を見て取れるのではないでしょうか。
中国時代劇を見て、則天武后に興味をもった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
則天武后について知りたい方は、氣賀澤保規著「則天武后」がおすすめ。
則天武后の心理状態が適度に描写され、小説のようにスラスラ読めます。
ぜひ一度、「則天武后」を読んでみてください。
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