遣唐使としても、詩人としても有名な阿倍仲麻呂。
多才な阿倍仲麻呂は天才と呼ばれますが、具体的にはどのような理由で天才と呼ばれているのでしょうか。
阿部仲麻呂が天才と呼ばれる理由と生涯、交友関係を紹介します。
阿倍仲麻呂が天才と呼ばれる理由は?
最難関試験として、世界的にも有名な科挙。
科挙は中国の官吏登用試験ですが、実は、阿倍仲麻呂は科挙に合格しているんです。
明経科より進士科のほうが難しかったんですが、なんと、阿倍仲麻呂は進士科に合格しました。
日本人でありながら、科挙に合格するだけでも天才的なんですが、注目すべきは阿倍仲麻呂が合格した時の年齢。
科挙の合格者の平均年齢は36歳。
にもかかわらず、阿倍仲麻呂は20代半ばで合格しました。
そりゃ、阿倍仲麻呂は天才だ。
阿倍仲麻呂の生涯
698年、阿倍仲麻呂は大和国(現在の奈良県)で生まれました。
祖父は筑紫大宰帥・阿倍比羅夫、父は中務大輔・阿倍船守で、弟は美作国の国司・阿倍帯麻呂です。
人の名前みたいですが、中務大輔は天皇の詔勅を公布する中務省の次官です。
第9回遣唐使に選ばれる
若くして教養があった阿倍仲麻呂。
717年に、第9回遣唐使の留学生に選ばれ、唐に渡りました。
唐に渡った後、太学(六学の一つ)で学び、科挙の進士科に合格しました。
玄宗に仕える
唐の第9代皇帝・玄宗(李隆基)に気に入られ、725年、洛陽で司経局校書(皇太子のもとで、経書の写本や校正をする)を務めました。
728年には左拾遺、731年には左補闕に任命され、玄宗をそばでサポートしました。
帰国が認められない
733年、第10回遣唐使が唐に渡りました。
遣唐使は次に渡った遣唐使の船で帰国するのがルール。
でも、玄宗は阿倍仲麻呂を第9皇子・李璲の教育係に任命し、阿倍仲麻呂の帰国を許可しませんでした。
内、判官・平群広成が率いていた第3船が崑崙国(現在のベトナム)に漂着しました。
第3船に乗っていた遣唐使のほとんどが現地人に捕まり、平群広成を含む生き残った4人は安南(ハノイ)都護府に保護されました。
その後、阿倍仲麻呂が「生き残った4人を、渤海経由で帰国させてほしい」と玄宗に上奏し、平群広成らは帰国することができました。
帰国を試みるも失敗
752年、衛尉少卿(兵器庫長官)に昇進しましたが、この時、阿倍仲麻呂は既に54歳。
藤原清河が率いる第12回遣唐使と共に帰国しようと、唐を出発しました。
でも、阿倍仲麻呂が乗っていた第1船が座礁し、南方で漂流した後、安南の驩州(現在のベトナムゲアン省南部)に漂着しました。
759年、藤原清河を帰国させようと、高元度が唐に渡りましたが、安史の乱が勃発し、治安が悪くなったことを受けて、玄宗は阿倍仲麻呂と藤原清河の帰国を認めませんでした。
長安にて73歳で亡くなる
帰国を諦めた阿倍仲麻呂は、760年、鎮南(現在のベトナム北部)都護府に任命されました。
その後、761年には安南都護府に、766年には安南節度使に任命されましたが、770年、長安にて73歳で亡くなりました。
唐の第11代皇帝・代宗は潞州(山西省長治市)大都督の官名を追贈しました。
阿倍仲麻呂の交友関係
日本を出発した717年から亡くなる770年まで、54年間も唐で生活した阿倍仲麻呂。
多才な阿倍仲麻呂は、唐に友人がたくさんいました。
・儲光羲
707年生まれの詩人。762年に進士、756年に監察御史となり、官吏としても活躍。
・李白
701年生まれの詩人。「白髪三千丈」から始まる秋浦歌が有名で、「詩仙」と呼ばれる。
・杜甫
712年生まれの社会問題を詠む詩人。「国破れて山河あり」から始まる「春望」が有名で、「詩聖」と呼ばれる。
・王維
699年生まれの詩人。中書舎人や給事中を務めるなど、官吏としても活躍。また、音楽や絵にも通じていた。
阿倍仲麻呂といえば、小倉百人一首の一つである「天の原 ふりさけ見れば 春日なる三笠の山に 出でし月かも」の作者としても有名ですよね。
この歌は、753年、唐から帰国することが決まった時に、阿倍仲麻呂が王維の前で詠んだといわれていて、西安には、この歌の歌碑が建てられています。
また、「全唐詩」という唐で作られた詩を集めた書物に、阿倍仲麻呂本人が作った詩、阿倍仲麻呂を詠んだ詩が掲載されています。
阿倍仲麻呂は中国でも有名なんですね。
まとめ
阿部仲麻呂が天才と呼ばれる理由と生涯を紹介しました。
阿倍仲麻呂は20代半ばで進士科に合格し、唐の第9代皇帝・玄宗に気に入られ、さまざまな官職に就きました。
帰国を試みるも、船が座礁したり、安史の乱により、玄宗が帰国を許さなかったりして、長安で最期を迎えました。
天才と呼ばれる阿倍仲麻呂。でも、日本に帰りたくても帰ることができなかった阿倍仲麻呂の最期は切ないものがありますね。
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