① 慶長19年(1614年)11月
② 慶長20年(1615年)5月
に起きた、徳川家康が豊臣家を滅ぼした戦い・大坂の陣。
大坂の陣が起きた原因は、慶長19年(1614年)7月に起きた方広寺鐘銘事件にあるとされています。
方広寺鐘銘事件とは、どのような事件なのでしょうか。
① 大坂の陣の原因となった方広寺鐘銘事件
② 鐘銘に対する徳川家康の指摘が正しかったのか、それとも言いがかりだったのか
を紹介します。
大坂の陣の原因・方広寺鐘銘事件とは?
文禄4年(1595年)、豊臣秀吉はよく祈願していた大仏・盧舎那仏を安置する目的で、方広寺を建立しました。
ところが、文禄5年(1596年)9月、慶長伏見地震が起こり、大仏は損壊。
慶長2年(1597年)5月、損壊した大仏を放置するのは縁起が悪いため、大仏は解体されました。
豊臣秀頼が大仏の再建に取り掛かる
慶長3年(1598年)8月には、豊臣秀吉が亡くなります。
すると、三男・豊臣秀頼は豊臣秀吉の遺志を継いで、大仏の再建に取り掛かりました。
二度と地震で損壊しないよう、耐震性に優れた銅を用います。
ところが、その努力も虚しく、大仏の再建中に火災が発生。
再建中の大仏はもちろん、大仏殿にまで引火し、大仏、大仏殿共に跡形もなくなってしまいました。
豊臣秀吉の死後10年が経った慶長13年(1608年)10月。
徳川家康は豊臣秀頼に大仏、大仏殿の再建を勧めました。
その理由は、豊臣秀吉の遺した莫大な財産を再建に投資させて、財産を枯渇させようと考えたから。
この3年前にあたる慶長10年(1605年)4月。
徳川家康は将軍職を退き、三男・徳川秀忠に後を託しました。
江戸幕府第2代将軍になるのは自分だと思っていた豊臣秀頼は、
話が違う!
と言って怒り心頭。
この頃から、徳川家康と豊臣秀頼の関係はギクシャクしていました。
もちろん、徳川家康は豊臣秀頼が怒っていることに気付いていました。
徳川家康の助けを得て、大仏が完成する
・米を贈る
・大仏に貼り付ける金を江戸で鋳造する
など、それなりの費用を負担して、徳川家康は豊臣秀頼のやる気を引き出します。
そして、慶長17年(1612年)、ついに2代目となる大仏、大仏殿が完成しました。
慶長19年(1614年)7月には、梵鐘(釣鐘)が完成し、大仏の開眼供養を行うだけとなりました。
豊臣秀吉の遺志が16年越しに形となったんです。
豊臣秀頼の親孝行に、豊臣秀吉はあの世で感謝したに違いありません。
徳川家康が梵鐘の銘文に因縁をつける
ところが、梵鐘を見た徳川家康が不満を抱きます。
徳川家康が目をつけたのは、梵鐘に書かれていた「国家安康 君臣豊楽 子孫殷昌」という銘文。
この銘文の意味は、
国家が安らかに治まり、君臣が豊かな暮らしを楽しみ、子孫が繁栄しますように。
といった、平和の世の中や人々の幸せを願うもの。
ところが、徳川家康は、
・国家安康は家康という名前を二つに切って呪いをかけようとしている
・君臣豊楽は豊臣を君主として楽しむという意味を表している
と解釈したんです。
この銘文をつくったのは、豊臣秀頼ではなく、南禅寺の禅僧・文英清韓。
文英清韓は、
(徳川家康が)解釈したような意味ではない。
と弁明しましたが、徳川家康は全く聞き入れませんでした。
こうして、大坂冬の陣が勃発し、豊臣家は滅亡へと向かっていくこととなります。
方広寺鐘銘事件は徳川家康の言いがかり?
「国家安康 君臣豊楽」という句に、どのような意図が込められていたのか。
文英清韓、豊臣秀頼の亡き今となっては分かりませんが、大きな疑問が残されています。
教科書で歴史を学ぶ私達は、徳川家康を「徳川家康」と呼びます。
でも、当時、徳川家康を「徳川家康」と呼ぶ人はいませんでした。
というのも、徳川家康のように地位の高い人は官職で呼ぶのが一般的だったからです。
つまり、当時、徳川家康は「内府」などと呼ばれていました。
にも関わらず、文英清韓は徳川家康の名前を堂々と使い、豊臣秀頼はそれを許可してしまいました。
「名前を二つに切られた!」「不吉だ!」というのは、徳川家康の言いがかりかもしれません。
でも、当時の一般常識に従わず、徳川家康の気分を害したのは確かです。
徳川家康に付け入る隙を与えてしまったのは、文英清韓と豊臣秀頼の落ち度といえるのではないでしょうか。
まとめ:豊臣秀頼は徳川家康に大坂の陣の口実を与えてしまった!
① 大坂の陣の原因となった方広寺鐘銘事件
② 鐘銘に対する徳川家康の指摘が正しかったのか、それとも言いがかりだったのか
を紹介しました。
方広寺鐘銘事件は梵鐘に書かれていた「国家安康 君臣豊楽」という銘文に、徳川家康が気分を害したことから始まりました。
徳川家康の生きていた時代では、地位の高い人を官職で呼ぶのが一般的でした。
「国家安康」にどのような意図が込められていたのか、文英清韓と豊臣秀頼に聞いてみたいですね。
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