則天武后が自分の子どもを殺したという残酷なエピソードは有名ですよね。
則天武后が中国三大悪女に数えられる理由の一つです。
でも、則天武后がどんなに悪女だったとしても、自分が産んだ子どもを愛していなかったはずがありません。
何故、則天武后は子ども・李弘と李賢を殺したのでしょうか。
則天武后が子ども・李弘と李賢を殺した理由を紹介します。
則天武后が子ども・李弘を殺した理由
李弘は唐の第3代皇帝・高宗と則天武后の間に生まれました。
李弘を出産した時、則天武后は高宗の妻ではありませんでした。
則天武后はもともと第2代皇帝・太宗の側室。
太宗が崩御した後、子どもがいなかった則天武后は感業寺に出家しましたが、以前から則天武后を愛していた高宗と寺で逢い引きしました。
やがて則天武后は妊娠し、寺で内密に李弘を出産しました。
王皇后が廃され、則天武后が皇后になると、皇太子・李忠(王皇后の養子)も廃され、李弘が皇太子になりました。
王皇后が廃された理由の一つが、子どもを授からなかったこと。
つまり、李弘を授からなければ、則天武后も皇后になることはできませんでした。
則天武后にとって、李弘は恩人で、大切な子どもでした。
李弘は文武両道で、性格は温和。
宮中で李弘を嫌う者はいませんでした。
ところが、李弘のある一言がきっかけで、則天武后と李弘の関係が崩れました。
「朝廷に関与しないように」と、則天武后に言ったんです。
当時、則天武后は簾越しに朝議に出席し、高宗の背後から指示を出していました。
これを垂簾の政といいますが、李弘は高宗を差し置いて、則天武后が朝廷を取り仕切っていることに不満を抱いていたんです。
皇太子である李弘は高宗の後継者。
高宗が李弘に譲位すれば、李弘は則天武后を廃してしまうかもしれません。
危機感を募らせた則天武后は、李弘の食事に毒を盛って殺してしまいました。
則天武后が子ども・李賢を殺した理由
李弘に続いて、則天武后が出産したのが李賢です。
もともと則天武后と仲が良かった李弘に対し、李賢は幼い頃から則天武后を遠ざけていました。
というのも、李賢の本当の母親は、則天武后の姉・韓国夫人だという噂があったからです。
則天武后は李賢を妊娠している最中に、高宗と韓国夫人の3人で、太宗の墓参りに出かけました。その道中で則天武后は出産しましたが、出産に立ち会ったのは韓国夫人ただ一人。
身内である韓国夫人以外に、則天武后が李賢を出産したと証明する者がいませんでした。
また、当時、高宗は韓国夫人を寵愛していたため、「韓国夫人が内密に李賢を出産した」という噂が流れてしまったんです。
政務に忙しい則天武后に代わって、韓国夫人が李賢を育てていたことも重なり、李賢は則天武后を遠ざけていました。
李弘が亡くなると、李賢は皇太子になりましたが、李弘は則天武后に殺されたのではないかと疑い、則天武后をますます避けるようになりました。
李弘が亡くなった今、李賢が高宗の後継者。
李賢が皇帝になったら、則天武后を廃してしまうかもしれません。
だからといって、李弘と同じように、李賢に毒を盛って殺すわけにいきません。
則天武后は李賢との関係を改善しようと、親孝行について書かれた本を贈りました。
でも、李賢は本を読まず、則天武后に御礼も言いませんでした。
この頃、持病に悩む高宗を治療するために、陰陽師が宮廷を出入りしていました。
陰陽師の本来の仕事は将来を占うこと。
陰陽師は李賢の人相を見て、「世継ぎには向いていません」と言いました。
高宗と則天武后が陰陽師を信じきっていると思った李賢は、盗賊の仕業に見せかけて、陰陽師を殺してしまいました。
陰陽師は高宗の命の恩人。
陰陽師を殺した者の捜索がすぐに始まり、李賢は逮捕されました。
李賢は廃されて流罪となりましたが、則天武后は臣下・丘神勣に命じて、李賢に自害させました。
まとめ
則天武后が子ども・李弘と李賢を殺した理由を紹介しました。
第一子・李弘は文武両道で、臣下からも親しまれ、皇太子はもちろん、高宗の後継者にふさわしい人物でした。
でも、朝廷の方針や体制について、則天武后と李弘の考えが合わず、危機感を募らせた則天武后は李弘を殺してしまいました。
第二子・李賢は、自分が生まれた境遇から、自分の本当の母親は則天武后の姉・韓国夫人だと思い込んでいました。
そのため、則天武后との親子関係には深い溝がありました。
李弘が亡くなると、李賢は則天武后をますます遠ざけるようになり、溝は深まるばかり。
親子関係を修復できないまま、月日が流れ、ある日、李賢が高宗の命の恩人を殺したことで、則天武后の堪忍袋の緒が切れて、李賢を殺してしまいました。
10ヶ月もお腹の中で育て、お腹を痛めて産んだ子どもを、則天武后が愛さなかったはずがありません。
それでも、自分の子どもを殺す選択をしたのは、則天武后が男尊女卑の時代を生き抜こうとしたからかもしれませんね。
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