徳川家康が注力した河川工事「利根川の東遷、荒川の西遷」とその理由

天正18年(1590年)7月18日、関東8ヶ国に国替えを命じられた徳川家康は江戸に入ります。

江戸に入った徳川家康がま­ず取り組んだのは河川工事でした。

徳川家康が注力した河川工事利根川の東遷荒川の西遷」とその理由を紹介します。

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徳川家康が注力した河川工事

伊奈忠次に命じて、徳川家康は「利根川の東遷、荒川の西遷」と呼ばれる大規模な河川工事を行いました。

利根川の東遷

赤堀川を開削して、江戸湾(現在の東京湾)へと流れていた利根川と渡良瀬川を合流させ、太平洋に流しました。
利根川を東に移動させたため、「利根川の東遷」と呼ばれています。

荒川の西遷

利根川の支川だった荒川を分離し、和田吉野川、市野川、入間川に繋げました。
荒川を西に移動させたため、「荒川の西遷」と呼ばれています。

徳川家康が伊奈忠次に河川工事を命じたのは天正18年(1590年)。
大規模な河川工事が伊奈忠次一代で完了するわけがありません。長男・伊奈忠政、次男・伊奈忠治に受け継がれ、承応3年(1654年)に工事が完了しました。

徳川家康が河川工事に注力した理由

何故、徳川家康は河川工事を行ったのでしょうか。

飲料水を確保するため

関東移封に伴い、徳川家康は大勢の家臣とその家臣が共に江戸に移り住むことになります。
家臣やその家族が江戸で不自由のない生活を送れるよう、商人や医者などを住まわせなければいけません。

でも、江戸は水源となる山から遠いうえに、井戸が少ない土地でした。

増えた住民の数だけ、井戸を増やせばいいと考える方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、海に面していた江戸の地下水には塩分が多く含まれています。
井戸を掘っても、飲み水に使うことができなかったんです。

水は私達の生活に最も欠かせないもの。
家臣やその家族、生活を支える民を江戸に住まわせるためには、飲料水を早急に確保する必要がありました。

物資運搬ルートを整備するため

江戸は奥州と伊勢方面(大坂や京都)の交易の仲介拠点。

小田原征伐が起きる前に関東を治めていた北条氏は、
① 津料(港湾使用料)
② 関銭(関税)
交易関係者から徴収して財源にしていました。

① 奥州の物資は陸路で関宿(千葉県野田市)に搬入して江戸湾
② 伊勢方面の物資は江戸湾の港から搬入して陸路で鹿嶋(太平洋)
に運んでいました。

川を利用する場合には、船の荷物をその都度積み替えなければいけませんでした。

川を切り離したり、合流させたりする河川工事により、船の荷物を積み替える必要がなくなります。
結果、運搬日数、費用を減らすことができました。

江戸城の守備を強化するため

① 江戸城から北西にある川越城(埼玉県川越市)
② 江戸城から北にある岩槻城(さいたま市)
③ 江戸城から北東にある関宿城(千葉県野田市)
奥州方面から江戸城を守る要でした。

また、
① 川越城は入間川
② 岩槻城は綾瀬川の上流
③ 関宿城は利根川と下総川の繋ぎ目
にあり、江戸湾で行われる交易においても重要な役割を担っていました。

そこで、徳川家康は、
① 川越城を酒井重忠
② 岩槻城を高力清長
③ 関宿城を松平康元
に任せ、江戸城の守備を強化したり、江戸における交易を更に発展させたりしました。

川の多かった関東平野は湿地地帯で、農作物を育てるのには適していませんでした。
でも、河川工事により、関東平野は肥沃な土地になり、穀倉地帯に生まれ変わりました。

一方、大雨の度に洪水が起きる氾濫地帯にもなり、多くの命が奪われてしまいました。
洪水被害を食い止めようと、明治、大正、昭和へと時代が移り変わっても、河川工事が行われ続けました。

まとめ:今の利根川と荒川は徳川家康と伊那忠次の努力の結晶

徳川家康が注力した河川工事利根川の東遷荒川の西遷」とその理由を紹介しました。

関東移封された徳川家康は、
① 飲料水を確保するため
② 物資運搬ルートを整備するため
③ 江戸城の守備を強化するため
④ 関東平野を穀倉地帯にするため
に、「利根川の東遷、荒川の西遷」と呼ばれる大規模な河川工事を行いました。

クレーンや掘削機のなかった戦国時代や江戸時代。
江戸時代には、計画書を見ながら指示する伊奈忠次、指示に従って土砂を運ぶ人々がいました。
歴史に思いを馳せて、利根川、荒川をぼーっと眺めてみるのもいいかもしれませんね。

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